#22
keeping / wrapping / drying
びんかご
須浪亨商店
KURASHIKI, Okayama, Japan
- rush
- approximately H46cm φ12cm
the product:
藺草(いぐさ)で編まれた「びんかご」。びんかごという名のとおり、醤油や酒などの一升瓶を運ぶために作られました。重くても、持ち手が太めで持ちやすく、少し濡れても大丈夫なつくり。丈夫なびんかごは、藺草を綯(な)い、縄からつくっていきます。長さを揃えた16本の縄で、持ち手部分から底まで継ぎ目なく編んでいきます。編み終わりは藺草を少し残し、裏表をひっくり返して仕上げます。 そうすることで、底の編み終わった部分の目が逆に詰まっていくことでほどけにくくなります。少し長めに残した藺草はクッションとなり、置いたときの衝撃をやわらげてくれる効果も。
胴体部分の円が重なり合う柄は、七宝(しっぽう)柄といい、円が永遠に連鎖し繋がることから、円満、調和、縁などの願いが込められた縁起の良い柄とされています。
瓶の太さ、重さや形によって、七宝柄の編み目が変形するので、一升瓶より小さい瓶をいれてもフィットします。
須浪亨商店5代目の隆貴(りゅうき)さんは、お祖母様から教わった「びんかご」の編み方に、持ち手の長さや瓶を入れた時のバランスなどの改良を重ねて今の形になりました。
また、現代の生活にあわせて、ワインボトルや四合瓶が入るひとまわり小さい「びんかご(小)」も隆貴さんのアイディアでつくられました。
びんかごに、ワインを入れてピクニックやホームパーティに持っていったり、編まれた七宝柄が縁起が良いことから、お祝いとしてお酒をびんかごごと贈るのにもぴったり。
瓶のほかにも、玉葱などの野菜を入れ、風通し良く吊るして収納することもでき、さまざまな用途で重宝します。
藺草は、その日の湿度によって柔らかさが変わり、形のくせが付きやすいですが、使っていくうちに柔らかくなっていきます。
編み立ては、ハリのある青々とした香りがたつ緑色の藺草は、時間が経つにつれて薄茶色へと変化していきます。
汚れが気になった場合は、ブラシやふきん等で汚れを掃ってください。
湿気が多い所でのご使用が続いたあとは、風通しの良い日陰でしっかりと乾かしてください。
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the maker:
創業1886年の須浪亨(すなみとおる)商店。藺草(いぐさ)の生産地であった倉敷で、畳表と染色した藺草で織む花ござを製造していました。かつて、島が点在する海だった倉敷市一帯は、江戸時代の初期に干拓が本格化し、塩分に強い藺草の栽培がはじまりました。 明治時代には、倉敷で藺草を染める技術が開発され、さまざまな装飾が施された花ござが作られるようになります。実用的で美しい花ござは、国内外で高く評価されていくようになりました。
戦後、本格的に倉敷の工業化が進められた影響もあり、藺草の畑が住宅へと変わり、また昭和40年代になると、畳のない人々の生活様式の変化により、畳表と花ござの生産が途絶えてしまいます。
5代目の隆貴(りゅうき)さんのお祖母さまの栄さんは、畳表や花ござを織る傍ら、畳表には適さない短い藺草を使って「いかご」や「びんかご」など、生活で使う道具を内職的に編んでいました。
隆貴さんは子どもの頃から、栄さんが編んでいるのを手伝い、自然と編み方をおぼえていきます。
現在、隆貴さんは栄さんから学んだ技術を活かして、いかごやびんかごのほかに、鍋敷きやスイカかご、地元の人に頼まれた縄暖簾などものづくりを継承しています。
今でも忙しい時には、栄さんも手伝って一つ一つ丁寧に手作業で編んでいます。
日常生活で使うもので、一生ものではありませんが、須浪亨商店では、可能な範囲で修理を行なっています。
修理する部分は、ほかの藺草の色と馴染むように、同じ色の藺草を用意して目立たなくするなど細かい工夫を施しています。
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